安心毛布があるかぎり

KAT-TUN、NEWS、ジャニーズWEST中心ジャニオタ・俳優オタの雑記です。

カサアリ読了感想

加藤シゲアキ著・短編集「傘をもたない蟻たちは」を読了した。

傘をもたない蟻たちは

傘をもたない蟻たちは

色々な雑誌で発表された為、これらが単行本になるにはどれだけかかるんだろう…と思っていたが、こんなに早く纏まるなんて。シュシュアリスも角川だったんだと今気づいた(遅)。

『染色』、『恋愛小説(仮)』、「にべもなく、よるべもなく」は中二病的な匂いを強く感じた。
『イガヌの雨』以外、とにかく後悔や過去に固執する青年ばかりが主人公。自分を持っていると自負していそうなのに実際は足許がぐらぐら揺らぎやすい主人公達ばかりだ。先日ニュースZEROで「(書く際)どうやってこの主人公を苦しめてやろう」というような発言をしていたが、その通りだと思った。
読んでいると、学生時代のエゴ、葛藤、背徳感、後悔等々が次々と頭をよぎり自分の学生時代と重ねてしまう。こういうところが恥ずかしくて痛くて彼の小説は非常に座り心地が悪い。
先に挙げた3作品は最後、拗らせた少年(青年)時代の終わりを迎えるのだが 、葛藤から解き放たれたとは言い難いどれもベタついた終わり方をしていた。このベタつきが気持ち悪くてとても良かった。この粘着質ですっきりしないメランコリックな感じがこの短編集には合っている。

「イガヌの雨」は雑誌掲載時、とにかくイガヌが恐ろしく、読了後はすっかり食欲が減退しダイエット効果抜群な話だと思った記憶がある。冒頭に登場する主人公・美鈴宅の食事の描写は薫ってさえきそうでアジフライが食べたくなった。今は栽培、養殖等様々な技術が発達し、季節を問わず私達は食べたい物を口に出来る。だが、季節の物をその時期に頂ける幸せを忘れてはいけないなと思った。なかなか…それが難しいのだがね…。

個人的に好きなのは「Undress」と「インターセプト」だ。どちらも最高に後味が悪い(笑)。
インターセプト」は世にも奇妙な物語でありそうだ。「Undress」はNHKの22時頃に放送してる社会派(&大人の愛憎)ドラマでやっていてもおかしくないと思った。ドラマ化しないだろうか。観たい。どちらも登場する女性が分かり易くしたたかな所が好きなのかもしれない。
初出一覧を見てよくよく考えると、どの話も発表媒体に内容と雰囲気が合っており、凄いという言葉に尽きる。ゴーストがいるのでは?と言われるそうだが、全体に漂う雰囲気は確かに加藤シゲアキ先生のものだ。次回作も楽しみにしたい。

実は何よりWiNK UPで連載しているフォトシゲニックを単行本化して欲しい。ワ○ブックス様、何卒宜しくお願いします。